
人と挨拶をすることは日常的なことで、特別な要素はないといえます。
しかも挨拶はコミュニケーションの基本でもあります。
ただ、よく考えてみると、自然に行える挨拶もありますが、意外に気を使っていることもあります。相手によっては、気疲れしたり、そもそも挨拶することが面倒であったりするケースもあるでしょう。それだけでストレスにもなりそうです。
また、挨拶したのに相手に無視されたりしたら、それだけで憤りを感じたり、損した気分になったり、嫌われているのかと思ってストレスになったりします。挨拶したほうが良いのか、したとしても、挨拶が返ってくるのか、無視されるのか、そんなことを気にしてる人も、実は多くいるのかもしれません。
ところで、日本では店舗に入ったときに、店側の人からは「いらっしゃいませ」と言われますが、それに対して返答する必要はないといえます。仮に店員が「こんにちは」という挨拶をしてきても、同じように、挨拶に対応する必要は感じないかもしれません。無視するだけでなく、挨拶に対して露骨に迷惑と感じる人もいるかもしれません。
これがドイツだと、街中の店舗ではごく日常的に挨拶が交わされます。
ただ、ドイツ語会話集に出てくる定番の「Guten Tag!」(こんにちは)はあまり使いません。朝の「Guten Morgen」はよく使いますが、「Guten Tag!」と言う機会はかなり少ないといえます。ドイツ語会話の基本中の基本ですが、実際の街中では使われるシーンは少ないといえます。
これはかなりフォーマルな表現で、街中ではもっとカジュアルな表現を使うのが一般的です。
では何が使われるかというと「Hallo」で、英語の「Hello」です。日本人には英語よりドイツ語のほうが発音しやすいと思います。
店に入って店員さんと「Hallo」と言って挨拶するのは、ごくごく日常的なため、店舗内での挨拶をどうするかを迷う必要もないし、その行為にストレスを感じることもありません。
ただ、ここで思い出したのが「Moin」と「Moin moin」です。
昨年、ベルリンに行ったとき、この言葉は耳にしませんでした。よく使われているイメージがあったのですが、一度も使われている場面に遭遇せず、当然ながら自分でも使いませんでした。
そこで調べてみると、低地ドイツ語やフリジア語の名残の表現らしく、主に使われているのはハノーファー以北だといいます。なるほど、ハンブルクで日常的に使われていたことから、当たり前のように思っていましたが、いわゆる方言の一種ということでした。
ついでにハンブルクらしいというと、「Na」があります。
無意識に「Na ja」などのように口にしてしまいますが、それとは別に、単独の「Na」だけで「こんにちは。元気?」という意味で使えてしまいます。実に便利な言葉です。これはハンブルク独特の習慣ですが、ドイツ語から離れて久しいと、これを使うのは逆に難しいようにも感じてしまいます。
さて、店舗での日常的な挨拶を経験していると、仮に店員との間の些細なやりとりであったとしても、何となく空気が変わるような気もします。実際に購入するしないに関わらず、店員とは意思疎通できそうな雰囲気まで生まれるかもしれません。
これが店舗ではなく、身近な人と接する場面でのことなら尚更です。仮に儀礼的、あるいは習慣的であったとしてもです。
さらに、相手が無視したとしても、挨拶という意思表示していることは事実です。反応を期待することをやめ、自分は人を受け入れているという意思表示だとすれば、何のストレスも感じなくてすむかもしれません。
より具体的には、ドイツでの店舗と同じように、挨拶を誰にどのタイミングでするかをある程度決めておけば良いでしょう。いわば自分のルールです。その上で、仮に相手から反応があろうがなかろうが関係ないとしておくのも重要です。
挨拶して反応がないこともストレスの要素ですから、最初から反応を期待しない、いや、なくて当然と思っていれば良いといえます。
ただ、そうはいっても、挨拶して相手が何も返してくれなかったら虚しいものです。機嫌が悪いのかな、とか、嫌われているのかな、とか余計なことを考えてしまうこともあるでしょう。
だからこそ、相手の反応を最初から期待しない、と徹底させることが重要です。
挨拶をした相手の状態を推察しても仕方ありません。仮に嫌われていたのなら、それが分かっただけで良かったともいえます。極端かもしれませんが、ここまで割り切っていれば、挨拶は苦になりませんし、ストレスの要因でもなくなります。
考えてもみてください。
ドイツの店舗での常識から見れば、店員が客に挨拶して反応がないのは違和感を伴いますが、日本では返答がないからといっても、誰も気にしません。それと同じです。