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ストレスでタンパク質合成が止まる

理化学研究所(理研)生命機能科学研究センター翻訳構造解析研究チームの伊藤拓宏チームリーダー、柏木一宏研究員らの研究グループは、ストレスによって誘導される翻訳開始因子「eIF2」のリン酸化が、タンパク質合成を抑制する仕組みを解明したとの研究成果を発表した。(プレスリリース)
この研究は、細胞に備わったストレス応答の基本的な機構の構造基盤を解明するもので、神経変性疾患など翻訳開始因子が関与するさまざまな疾患の理解に貢献すると期待されるものだ。
以下、プレスリリースより引用
細胞は紫外線などのストレスにさらされると、タンパク質の合成反応である「翻訳」を停止して、細胞活動の負荷を下げることが知られています。細胞がストレスを検知すると、翻訳開始因子eIF2がリン酸化されます。通常eIF2は、別の翻訳開始因子「eIF2B」によって活性化されて翻訳を開始しますが、ストレスを受けてリン酸化されたeIF2は、eIF2Bの機能を阻害する分子へと変化し、その結果、活性型eIF2が減少して翻訳が抑制されます。この変化は、eIF2の1カ所のリン酸化で生じるもので、酵母からヒトまでの全ての真核生物に共通の機構です。しかし、「eIF2BによるeIF2の活性化」あるいは「リン酸化eIF2によるeIF2Bの機能阻害」の制御を切り替える分子機構は、長らく不明でした。
今回、研究グループは、eIF2とeIF2Bの複合体の立体構造を解析しました。リン酸化したeIF2は、eIF2Bへの結合の向きを反対側に切り替えてeIF2を活性化できない複合体を形成し、eIF2Bの機能を阻害することを明らかにしました。
なお、この研究については米国の科学雑誌『Science』に掲載されるという。