
ザンクト・パウリ(ザンクト・パウリの夜)を取り上げたので、同じくハンブルクの思い出に絡めた話題をもうひとつ。
時間軸を夜から夕方や日中に戻し、舞台もザンクト・パウリからハンブルク中央駅方面に移します。
ハンブルク中央駅 (Hamburg Hauptbahnhof) は、文字通りハンブルクの中心駅で、一日の平均利用者数は約45万人といわれますから、日本では、新宿駅には及ばなくても首都圏の主要駅ほどの乗降客はあるといえます。
中央駅の北側にはハンブルク美術館があり、その先の左側に内アルスター湖、右側に外アルスター湖があります。
市庁舎は内アルスター湖の南側にありますが、そこへ行くためにはショッピングモールからベルク通りを渡ることになります。ここは市庁舎前の広場と内アルスター湖を結ぶラインに沿ってアーチを描きながらアーケードが続いています。
このアーケードは「アルスターアルカーデン」といい、運河に沿ってカフェのテーブルが並んでいたり、おしゃれな店舗も多くあります。運河には水鳥の姿も見ることができます。
これは中世にアルスター湖から港へ向かって造られた運河で、都市の防御機能を担っていました。
周囲にはレストランも多く、少し先に福音教会もありますが、基本的に繁華街と官庁などの機関が入り混じっている印象です。
バリンダムに出て、その先のユンクフェルンシュティークに進めば、右手の内アルスター湖にはボートが見えてきます。都会の真ん中にある湖のため、なんとも贅沢な環境に思えます。
左側にはおしゃれな店舗やヨーロッパの伝統を背負ったような店もあり、百貨店もあります。
この周辺は中央駅よりUバーン(地下鉄)のユングフェルンシュティーク駅が最寄りになります。
ザンクト・パウリのような猥雑な街並みは、港と世界中から集まる船乗りという組み合わせがベースにありますが、この周囲は全く異質な空間が形成されています。同じ都市の一部ですが、異なる顔を持つことで、それだけ大きな規模を持つハンザ同盟の中心都市らしい風格といえるかもしれません。
また、アルスター湖があるロケーションも大きいといえるでしょう。
このアルスター湖は人口の湖です。それでもハンブルクの歴史に大きく関係しています。
湖が誕生したのは13世紀初め頃で、エルベ川の支流であるアルスター川でをせき止めたことでできました。目的は水車用でした。
内アルスター、外アルスターの2つをあわせて、湖面は184ヘクタールに及びます。
都市部の中心地にこれだけの広さを持つ湖というのは、なかなかない光景だといえるでしょう。
都会の中の湖ではあるものの、四季折々で様々な顔を持っています。
夏になれば、湖畔の公園で日光浴をする人の姿も多く見られます。ドイツでも北部にあるため、夏の日光は貴重です。もちろん、そのような理由を除いても、アルスター湖の湖面上から吹き上げる風も心地よく、日本ほど暑くなく、また湿気も高いわけではないので、湖畔で日光浴するのは実に快適です。
一方で冬にはアイススケートなども行われますが、最近は湖がスケートができるほどに凍らなくなったという話も聞くので、自分が知る冬のアルスター湖とは異なる風景になったかもしれません。
いずれにしてもハンブルク市民にとっては憩いの場でもあり、都市の景観の一部であり、市のシンボルでもあります。
観光客に人気なのは遊覧船です。
アルスター湖だけでなく、運河も通り、ハンブルクならではの倉庫街から北側にある高級住宅街などを巡ります。クライネガルテン地区を流れる運河にまで進むコースは、ハンブルクの優雅な都市を目の当たりにすることができるでしょう。
実はハンブルクは橋の多い都市です。都市としての規模がはるかに大きいとはいえ、海に面していないハンブルクがヴェネツィアよりも橋が多いというのは意外に聞こえるかもしれません。
ちなみに橋の数は2,428だといいます。
日常生活の拠点は東京ですが、はるか昔に居住していたハンブルクは、今でも郷愁があります。
生まれ育った街よりも思い入れは強いかもしれません。
日々のストレスを発散・解消するには、そこまで思い入れのある場所に行くのも有効かもしれませんが、ハンブルクとなるとストレス解消のためだけに気軽に行けません。
そう考えることもストレスかもしれません。
いつかまた、長期で滞在できる機会をつくり、優雅なるアルスター湖畔を歩き、運河に沿った住宅街を散策したりしたいと思っています。