
ストレス解消に非日常の世界を求めるなら、ドイツのツェレに行くのがお勧めです。
日本人のドイツ旅行というと、ロマンティック街道やベルリン、ミュンヘンなどの有名な都市が中心かもしれませんから、ツェレという小さな街はあまり馴染みがないかもしれません。
しかし、ツェレはニーダーザクセン州に属する都市で、「北ドイツの真珠」と呼ばれるとても魅力的な街です。人口はわずかに約7万人程度の規模で、ヴェーザー川の支流であるアラー川が街を貫いています。
山間部ではないため、街は平坦な場所に広がっています。
中心部も小さく、半日あればこの街の独特の雰囲気を十分に感じ取ることができます。
ツェレにはクルマで行きました。
そのため鉄道の事情はわかりませんが、改めて調べてみると、駅は中心街からかなり離れているようです。それでも徒歩圏ですから、DB(ドイツ国鉄)で訪れるのも悪くないでしょう。
さて、このツェレがストレス解消としての非日常の世界を形成している理由ですが、それは、この街が童話の世界だからです。
木組みの家が建ち並び、チェーン店といえども伝統的な木組みの建物に入り、猥雑化した現代的な都市の光景がありません。しかも木枠のデザインがそれぞれに主張していて、横木や柱にも装飾されています。樹木の温もりと、色鮮やかな装飾により、まさに童話の世界そのものの景観が維持されているのです。
今までドイツの都市は数多く訪れていますが、ここツェレほど「童話感」のある都市を知りません。「北ドイツの真珠」という形容も、なるほど、と唸らせます。
それも第二次大戦の被害が旧市街になかったことが原因と言えます。
15世紀以降の木組みの家々が残り、その数も500軒程度あるという話です。
最も古いのは、1526年に建てられた家で、ハイリゲンクロイツ(Am Heiligen Kreuz)の通りにある26番地の家です。グリーンに彩られた家で、1階は店舗になっています。
1532年に建てられたホッペナーハウス(Hoppener Haus)は、レンガと木枠の組み合わせが見事です。しかも木枠にはテーマパークにあるような装飾が上品に施されています。嫌味のないカラフルさです。このホッペナーハウスは、ポスト通り(Poststraße)とルンデ通り(Rundestraße)の角にあります。
ツェレでは旧市街地の南にフランス庭園があり、その近くのガストホフに宿泊しました。一人で訪れましたが、家族や恋人と訪れるのにも最適かもしれません。
日本ではテーマパークを除いて絶対にありえない都市です。
ただ、観光目当てとなると、旧市街の雰囲気を楽しみことを除けば、それほど見て回る場所はないかもしれません。
あえてあげればツェレの城かもしれません。
ただし、ドイツの城というとディズニーランドのシンデレラ城のモデルとなったノイシュヴァンシュタイン城や、ハイデルベルクやライン河畔の古城を連想するかもしれませんが、ツェレの城は違います。
山間部ではないので、要塞という感じはなく、城とはいうものの領主の館、といったほうが良いかもしれません。それでも1530年に建設された城で、ルネサンス様式から、17世紀にバロック様式が付け加えられた独特なものです。
そのため正面に向かい、右がルネサンス様式、左がバロック様式という、なんとも風変わりな城です。城内には教会もあります。
慌ただしく様々な観光名所を巡るバスツアーでは、ツェレに寄ることはないでしょう。仮にそんなツアーがあったとしても、この街を本当に堪能できるとは思えません。
ストレス解消だけでなく、新たな発見のためにも、非日常空間の提供してくれるツェレにぜひ行ってみてください。