
ケリー・マクゴニガル(Kelly McGonigal)という人をご存知でしょうか?
健康心理学者ですが、サイエンス・ヘルプとよばれる行動で、科学の研究について学会や業界の人だけでなく、一般の人にまでその研究結果を説明しています。
彼女の発言は、多くのメディアで引用されています。ここ最近は、ストレスの問題点を中心としています。
ケリー・マクゴニガルは2013年のTEDの講演で、ストレスを悪とする考えが、具体的に健康面ではどのように影響するか、という研究について語りました。
数ヶ月で100万PVを達成したほどの話題になりました。
ストレス無害説です。
アメリカでの追跡調査の結果でした。
成人30000人を対象とし、8年間にわたるストレスと健康との関連について調査をしました。その結果、とても興味深い結果が語られました。
重度のストレスを感じている状態であったとしても、ストレスが健康に良くないと思っていない人は、死亡率が非常に低かったのです。
ケリー・マクゴニガルは、この点について語りました。
ストレス過多の状態であると、死亡リスクが43%増加するという調査結果があるものの、その結果を出しているのは、ストレスが健康に害があると思っている人の場合でしかなく、逆にストレスと健康は無関係だと思っている人の死亡率は低いという主張でした。
その上で、この8年間で、アメリカで「ストレス=害」と意識したことで死亡した人の総数を182,000人と推定しました。さらにアメリカ人の死因の第15位が、「ストレス=害」と意識したことだとしました。
この順位は皮膚がん、エイズ、殺人よりも上位です。
このことから、人間はストレスをどのように捉えるかにより、ストレスに対する体の反応が変化すると主張したのです。
TED (カンファレンス)では、「従来のストレスの理解は、もはや役に立たない遺産でしかない。動物的本能がストレスに置換し、社会はスマートになった。これこそが人間を完全に人間たらしめているものである」と発言しているほどです。
かなり難解になってきたので、もっと身近な例で見ていきましょう。
例えば、日常の生活で大きなストレスを感じたとします。近親者の死など、多大なるストレスを感じるはずです。このとき、心臓がドキドキすることもあります。この状態が体にとって悪影響と捉えた場合、本当に血管が収縮することで、心不全などを起こす原因をつくってしまうことになるのです。
しかし、心臓がドキドキした状態について、全く逆に、これは新鮮な血液を心臓に送り込んでいて、次の行動に備えて準備をしていてるのだと考えれば、血管は収縮することがない、ということになります。
ストレスを感じた状態をネガティブに捉えるか、ポジティブに捉えるか、この捉え方の違いで、健康への害があるかないかが分かれるということになります。
マクゴニガルは、ストレスを悪と考える人は、日常生活の中での期待値によって、より苦しむことになるとしています。期待されることが苦しむ要因となる逆効果だとしているのです。
ケリー・マクゴニガルのストレス無害説を知り、ストレスについて、少し考え方を変えてみるのはいかがでしょうか。