
丸くて、温かくて、柔らかい
ノンフィクション作家の眞並恭介氏の著書『すべての猫はセラピスト 猫はなぜ人を癒やせるのか』では、東日本大震災から約2年後、福島県の特別養護老人ホームでアニマルセラピーが行われた様子が掲載されています。
そこで登場するヒメという白猫は、セラピーキャットの先駆猫といわれています。飼い主は応用動物行動学の研究者:小田切敬子氏です。ヒメを生れてすぐにセラピーキャットにするため、セラピードッグのチャッピーに世話を任せたという逸話があるそうです。
さて、ヒメですが、大被災による多大なストレスや、心理的な苦痛を経験した老人たちに笑みを運んできたようです。ヒメを抱き、撫でるという、ただそれだけの行為によって、沈んだ表情から変化していったといいます。
人間は、「丸い」「温かい」「柔らかい」ものに触れると無意識に親しみを感じると言われていることから、好感を持たれるデザイン、イラスト等々は、このようなイメージを取り入れているともいわれます。
ただ、二次元の世界では「温かい」「柔らかい」は、あくまでイメージの世界となり、リアルな世界の生物としては、まさに猫が該当するといえるでしょう。
そういう意味で、猫は先天的に「親しみ」を抱かせる存在であり、セラピーキャットとしての役割を担えるのは当たり前ともいえるかもしれません。
サイレントニャー
猫と癒やしについては、『猫の「ゴロゴロ」』でも取り上げました。
そんな猫のサイレントニャーをご存知でしょうか?
英語圏では“Silent Meow”です。
猫が口を開き、鳴いた表情をしているのに、なぜか声が聞こえない状態のことです。いわば猫の口パク状態です。
この「サイレントニャー」は、実を言うと人間には聞こえないだけで、実際には高周波が出ているようです。人間の可聴域は、約20キロヘルツなのに対し、猫が耳で聞くことが可能な音域は約60~65キロヘルツだといいます。この差が、人間にとってサイレントニャーとなるのだそうです。
つまり、猫同士であれば聞こえるわけです。
特に子猫が母猫に向かってこの可聴域で声を出すようです。
つまり、甘えや愛情表現の際のものともいえるわけです。
サイレントニャーは、飼い猫であれば年齢に関係なくすることがあります。
飼い主への信頼と愛情にあふれている場合、母猫への甘えという名残により、何かをおねだりしたり、甘えたいという欲求をする行為になります。
ゴロゴロという喉を鳴らすことに加え、このサイレントニャーも同じような意味を持つといえます。
どちらも癒やされることになるでしょう。