アムールの風 / ハバロフスク旅情

日々繰り返される日常という名の毎日から、ふと離れたくなる瞬間。
日常生活とかけ離れた空間に身を置きたくなることもあるでしょう。ある人は南国へ、またある人は異文化へと旅に。

逃避行という旅の良し悪しは別にして、異空間に入り込むことで、ストレスの解消から新たな日常にリセットされることもあるでしょう。

そんな旅の選択肢に、日本から最も近い「ヨーロッパ」はいかがでしょうか。

日本人がイメージするヨーロッパといえば、例えばパリやロンドンの市街地だったり、ローマの古代遺跡、中世そのもの雰囲気の残るロマンティック街道だったりするかもしれません。いずれも日本と馴染みのある西欧の国々にある観光地といえるかもしれません。
しかし、ヨーロッパは西欧だけでなく、東欧にも様々な国々があります。その中でロシアはウラル山脈を超え、極東アジアにまで及ぶシベリアにもスラブ系ヨーロッパの都市が点在しています。ゲルマンやラテンと異なるもう一つの欧州が、実は日本のすぐ近くにあるのです。

日常とは全く異なるもうひとつの「ヨーロッパ」には、グァムやサイパンに行くのと同じ時間を要するだけで、簡単に行くことが可能です。
しかも時差はわずかに1時間。

凍てつくアムールの右岸に栄えるシベリアの都市・ハバロフスクは、そんな条件を満たす都市です。

寒々しくも美しい景観に包まれたハバロフスクは、開拓された街ならではのきれいな区画がされた都市です。激しい共産革命の動乱の時代には、極東地域を反革命軍が制圧したという歴史があります。日本軍は1918年にシベリア出兵により、この街を占領しました。2年後には日本軍は撤退し、極東共和国が成立しました。しかし、1922年に日本軍がシベリア出兵を終了すると、ハバロフスクはソビエト連邦政権の支配下に入りました。ソビエト連邦の崩壊後は、2000年にプーチン大統領がロシア全土を連邦管区制にし、ハバロフスクには極東連邦管区の本部が設置されることになりました。
まさに、現在のハバロフスクとは「ロシア極東部の首都」という位置づけになっているのです。

ロシア革命以前から日本との関係は深く、昭和初期まで600人程度の日本人居留地があったといわれます。第二次大戦後のシベリア抑留では、日本軍の将兵たちが強制労働させられ、多くの日本人が帰国することなくこの地で没したという悲しい歴史もあります。

極東ロシアで日本にほど近い都市としては、ウラジオストクもあります。
しかし、ハバロフスクが冷戦時代でも国際都市という性格を維持したのに対し、ウラジオストクはソビエト連邦崩壊までの期間、ごく一部の例外を除くと、外国人の居住だけでなく、ソ連国民まで含めた市外居住者の立ち入り禁止という、閉鎖された軍事都市でした。冷戦時代でも国際線が発着していたハバロフスクとは対照的でした。

さて、ハバロフスクですが、日本との関わり等々の歴史的背景に思いを馳せるのも良いですが、この街には日本人にはあまり馴染みのない知られざる魅力もあり、何の予備知識なしに訪れても十分に非日常空間を堪能することができます。

まず、アムール川です。
ロシア語で「Амур」、ラテン文字転写では「Amur」。または、黒竜江ともいわれ、全長4,368kmは世界8位、流域面積は世界10位という大河です。
上流はモンゴル高原東部で、ロシアと中国との国境・シルカ川とアルグン川の合流点からオホーツク海のアムール・リマンまで続いています。
ハバロフスクでは、日本では見ることができないほどの凄まじく広い川幅になっています。

冬は極寒の地で、肌をさす冷たい風が凍結した川面に吹きつけています。
夏は日本のような暑さとは無縁なものの、どこか寂しい雰囲気が漂っている印象もあります。ある意味でこれも冷たい風といえるかもしれません。

しかし、日本とは全く異なる異文化の街で、モンゴルから続く大河のほとりに立つこと、それだけで時空を超えた感慨を覚えたりします。

市の中心部にはハバロフスク駅があり、ウラジオストクが閉鎖都市だった頃は、ここが外国人が乗降できるシベリア鉄道の終着駅でした。
駅からアムール川方面にはアムールスキー大通りがあり、ここは並木通りになっています。繁華街はムラヴィヨフ・アムールスキー通りで、旧市街になります。

スラブらしい雰囲気を味わうならロシア正教でしょう。

たまねぎに似た形をした屋根が特徴的なスパソ・ブレオブラジェンスキー大聖堂は、西欧にはない、ビザンチン帝国から続くロシアを堪能できます。
同じく教会で、ハバロフスクのランドマークとして親しまれているのは、ウスペンスキー教会です。

そんなハバロフスクは日本から直行便もあり、アジアにありながら「ヨーロッパ」、しかも「東欧」を感じられる街です。
そしてソビエト連邦時代のような外国人旅行者への規制も緩み、週末だけ「ヨーロッパ」を感じる旅に出ることも可能になっています。情報が氾濫した東南アジア諸国の観光地や、ありきたりな欧米諸都市とは全く異なる非日常空間を提供してくれるハバロフスク、行ってみる価値は十分にあると思います。

ちなみに治安もよく、同じロシアでもモスクワなどとは比較にならないくらいのレベルです。
現地の人々もフレンドリーで、外国人に対して親切な人も多いようです。異邦人として受け入れてくれる土壌は、冷戦時代でも開かれた都市であった影響があるのかもしれません。
少しストレス過剰だな、と感じたら、ハバロフスクの人たちとのふれあいで完全リセットされることでしょう。

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