
PCでの文字入力ですが、職場に限らず、日本国内全てを見渡しても、ほとんどの人がローマ字入力を選択しているように思えます。かくいうこの原稿もローマ字入力で作成しています。
そこで調べてみると「週間アスキー」のネット調査結果を見つけました。
ローマ字入力 : 93.1%
JISかな入力 : 5.1%
世代別では20代は96.3%がローマ字入力だそうです。60代以上でも86.6%なので、日本国民の標準入力がローマ字なのは間違いありません。
しかしです。
よく考えてみれば、入力しようとする文字をローマ字に変換し、それをキーボードで打って、表示されるのはローマ字ではなく日本の文字というのは、いかにも効率が悪い気がしませんか。
「あ」なら「a」だけなのでまだ良いですが、「か」だと「ka」と余計に1文字多く打たなければなりません。
「データの見えざる手: ウエアラブルセンサが明かす人間・組織・社会の法則」という書籍があります。
これまでのべ100万人日以上の行動を計測、その身体活動、位置情報、センサを付けている人どうしの面会などを記録した「ヒューマンビッグデータ」が、人間や社会に普遍的に見られる「法則」や「方程式」を次々と明らかにしているのである。(Amazonより一部引用)
これによると、人間が一日に打てるキーの数は決まっているといいます。
だとすると、より多くキーを打つ必要のあるローマ字入力よりかな入力のほうが、生産性は高いことになります。
Wikipediaにも興味深いものを見つけました。
日本語の文章(天声人語4日分:3,735文字)を入力したときの打鍵数の比較資料です。
JIS配列かな入力の総打鍵数 : 4,110
ローマ字入力の総打鍵数 : 6,474
親指シフト入力の総打鍵数 : 3,735
かなりの差です。
さらにここで注目すべきは「親指シフト」の効率の良さです。天声人語の文字数とキーを打つ数が一緒なわけですから、最も自然な入力ともいえます。
この親指シフトですが、これは日本語の「かな」を入力するために、1979年(昭和54年)に、富士通が考案したキー配列規格です。利用する人の代表的な意見としては、思考を中断しないタイピングが実現できることで、文章の入力に際して、ほとんどストレスを感じなくなるというものです。
日本語に特化し、「一つのアクションが、一つのかなに対応する」方法のため、効率だけでなく使いやすさの面でも優位といえるものですが、残念ながら現在では少数派といえます。
しかし、純粋に生産性やタイピングのストレスを考えたら、ローマ字入力が標準であることに疑問を持ってもよさそうな気がします。
少なくとも農水省が「働き方改革」の一環で「一太郎」を「Word」にしたという変化より、はるかに意味がある議論ができそうな気がしませんか?
NEWS & コメント 【農水省】「働き方改革」の一環で「一太郎」が「Word」に?
慣れ親しんだローマ字入力をわざわざ変更するのもストレスであり、新しい方法に慣れるまでは逆に生産性は下がることになるでしょう。
だから無理して変更するのもリスクといえます。
ただ、日本の生産性の低さや、タイピングに積もり積もったストレスについては、考え直す機会をつくっても良いのではないでしょうか。
ちなみにJIS規格化されなかったことで、かなり淘汰されてしまった親指シフトですが、わが家には今もキーボードが残っています。ただここ10年以上使っていません。
過去には親指シフト用キーボード搭載のカスタマイズされたノートPCも24回払いで購入した経験もあります。
ただ単に懐かしむためにこの原稿を作成したわけではなく、実は偶然ですがMACでも「Lacaille」という親指シフト(NICOLA)をエミュレーションするアプリを使っている人がいる、ということを知り、改めて日本語の文字入力について考えてみたくなったからです。(余談でした)