
背景
A社は北関東にある中堅商社で、ある大手企業の代理店として店舗も展開しています。
A社の社長の悩みのタネは離職率が絶えないことでした。
業界トップ水準の処遇をしているにもかかわらず、なぜ社員の退職が相次ぐのか、理由の検討がつかなかったといいます。
そこで、社員に自由記入のアンケート調査を実施したところ、会社に肯定的な意見と否定的な意見がたくさん寄せられました。結局、収拾がつかなくなり、組織行動診断の依頼を頂きました。
結果
組織行動診断により次の3点が確認されました。
1.潜在的な退職希望者が全社員の半数以上にのぼること
2.自由記入欄に好意的なコメントを残した人ほど、選択肢から回答する質問項目では、会社に対して否定的だったこと。
3.一部の店舗ではハラスメントや商品の横流しなどの不正が疑われていること
社長は、2の自由記入欄のコメントと数字データのギャップに、ことのほかショックを受けていました。自由記入欄に肯定的・好意的な解答を記入した人ほど、組織行動診断データでは批判的で否定的な結果だったからです。
逆に、会社に対して否定的な自由記入をした人は、数値項目が好意的・建設的である傾向が見られました。実はこれらは、多くの会社に共通する傾向です。
対応
この結果を受け、A社では内部牽制機能の強化とコミュニケーションの改善の2つの策を講じることにしました。違反行為やルール遵守などについての回答と、違反行為を放置する体質とに明らかな関係性が認められたためです。具体的には、退職者の大半がルール違反を見過ごす会社に嫌気がさしていたことが判明したのでした。
社員の側からすると、これまで言い出せなかったハラスメントや不正にメスを入れてくれた、という安堵もあったようです。こうした対策を実施した後、A社では退職者が減少し、業績は向上しました。不正や不祥事も激減し、別の大手企業からも代理店を受注することになり、業容は拡大の一途をたどっています。