
先日(平成29年9月15日)、玩具大手のレゴが、全世界の従業員の約8%を削減すると発表しました。
東芝や、シャープのように業績が著しく悪化しているというわけではないようですが、売上高や利益の伸びが鈍化したことの対策のようです。
さて、世界的にはこのような機動的なリストラがなされることが珍しくありませんが、日本企業において同じように機動的にリストラをすすめることは、必ずしも容易ではありません。
そもそも、使用者と労働者との労働契約を解消するためには、
①包括的同意(定年に達するなど一定の事由が発生すると当然に労働契約が終了するもの。「当然退職」)
②個別的同意(一般的に、労働者が退職を申込み、使用者が承諾する形で、双方の合意により労働契約を終了させるもの。「合意退職」)
③労働者の単独行為(労働者からの一方的な意思表示によって労働契約を終了させるもの。「辞職」)
といった方法がありますが、この他、
④使用者の単独行為(使用者からの一方的な意思表示によって労働契約を終了させるもの。「解雇」)
があります。
そして、リストラは、このうち④の「解雇」にあたります。
労働基準法上、この「解雇」は、自由に出来るのが原則です。
しかし、使用者からの一方的な意思表示による労働契約の解消である解雇は、従業員の生活に大きな影響を及ぼします。
そこで、裁判所は、「使用者の解雇権の行使も、それが客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当として是認することができない場合には、権利の濫用として無効になる」として、実質的には解雇を制限してきました(「解雇権濫用の法理」、労働契約法16条)。
リストラ(整理解雇)も、解雇の一種ですから、原則的には自由であるものの、解雇権の濫用となるような場合は、無効となります。
そして、整理解雇の正当性を判断する際、多くの裁判例が、①人員削減の必要性、②整理解雇回避の努力の履行、③解雇対象者の人選の妥当性、④解雇手続の相当性の4つ要件を検討してきました。
したがって、本件でも、上記4つの要件を満たすよう慎重に手続を検討し、実行していくことになるでしょう。
なお、前回、セクハラ行為が行われた=即懲戒処分という判断をしてしまうのは非常に危険である、という話をしました。
そして、懲戒処分の中でも、懲戒解雇については、過去の裁判例で、解雇を無効とする事例が多数存在しています。
使用者からの一方的な意思表示による労働契約の解消である解雇は、従業員の生活に大きな影響を及ぼします。
従業員を1名解雇した会社が立ち行かなくなるということは通常考えられません。
他方、多くの従業員は、会社から支払われる賃金を唯一の収入減としており、解雇は、従業員の生活に大きな影響を及ぼすことになります。
いわんや、懲戒解雇された従業員を雇いたいと思う経営者は、普通はいませんから、懲戒解雇は、従業員が会社に勤務する機会を事実上奪うに等しい行為です。
そのため、前述のとおり、解雇には、高度の社会的相当性が要求され、これを満たしていないと判断された場合、解雇権の濫用として、解雇は無効となります。
そもそも、労働契約の成立は、両者の合意によるものですから、労働契約の解消の基本も、「合意退職」であるべきといえます。
したがって、いかに従業員を円満に退職させるのか、がもっとも重要であり、 経営者の皆さんは、このことを強く意識していただきたいと思います。