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生産性の高さで知られるドイツ、生産性が下がった場合は?

「働き方改革」では長時間労働の問題や同一労働同一賃金、「高度プロフェッショナル制度」などが議論されてるものの、生産性の向上についてはあまり触れられていない。生産性の高さについてよく比較されるのがドイツだが、11月2日に「Capital」に興味深い記事が掲載された。(Wer ist schuld, wenn der Output sinkt?)
社内のチーム生産性が下がった場合、会社で何らかの問題があることを意味する。
チームの仕事のパフォーマンスが下がると、最初に警報、次に上司が怒鳴り散らす。しかし、そこで何をすべきだろうか? 経営者層の世代が行っていたように、従業員にプレッシャーを与えるか?
これがうまく機能しても長続きすることはできない。高性能のボイラーといえども、恒久的に高圧の負荷に耐えていると、あるときに破裂してしまう。その結果、エンジンは最終的に完全に動かかなくなってしまう。そのため、パフォーマンス低下が何であるかを最初に分析することが重要である。全米ビジネスリサーチインサイドがこの問題に取り組んでいて、なぜ生産性・パフォーマンス低下が突然に起こるのか、5つの一般的な理由を列挙し、それをドイツ国内向けの記事として紹介している。
1. 仕事への取組姿勢
仕事に満足している社員は生産性の高い社員である。朝、快適に目覚め、仕事を楽しみにしている人は、1日の最大の挑戦をするような日になる。しかし、仕事への消極的な態度で仕事を行う人は、労働力が極端に低下する。しかも残念なことに、このことはウイルスのように同僚に伝染していく。他の人のマイナス・エネルギーを感じるのは実に容易なことだからだ。
この仕事への取組姿勢が周囲に与える影響は、万国共通といえるだろう。ただ労働環境が社員の気持ちにも影響し、その結果として本人の仕事への態度にも変化を生じさせることもある。ここではあくまで社員の仕事に対する取組姿勢だけにフォーカスした内容といえる。
2. 上司をせめる
上司に不平不満をいうのは実に簡単である。しかも、残念なことに、それはしばしば正当化される。 結局、経営管理・マネジメントに対する要求は近年急激に変化してきたが、職種による変化はないに等しい。上司はいつでも最高の管理者である必要はない。もちろん、それは特に尊敬されるような場合にも関係する。ところが、良いパフォーマンスというのは、しばしば昇進で報われる。
マネジメントセミナーで部下への共感については学ぶのは大変なことだといえる。しかし、社員への対応という面では極めて重要なことだ。国立ビジネス研究所(National Business Research Institute)の調査では、「生産性が低下したときの要因ナンバーワンは、悪い上司である」と語っている。優れた上司とは、良いパフォーマンスに動機を与え、刺激を与え、アニメートし、報酬を与える。 悪い上司は正反対のことを行う。その結果、チームに極めて大きな影響を与えることになる。
部下への共感から、良いパフォーマンスを導いていくようにするのが課題であることは間違いないだろう。
3. 病欠
間違いなく病気の社員は、最高のパフォーマンスを実行することはできない。社員が肉体的にも精神的にも健康状態であることが、その会社にとっての利益にもなる。そのため、社員の健康管理は重要で、会社として社員の健康維持への投資が必要といえる。特に精神疾患はドイツでも増加傾向にあるという。過重労働のないドイツでも、日本とは異なる理由で同様の傾向があるのかもしれない。事実、9月には健康保険会社がドイツの精神衛生上の病気休暇についてのデータを発表している。
コンピュータ機器の前で単調に数時間も座り続けると、背中はほとんど固定化されたままになる。高さ調整可能なデスクや、人間工学に基づく椅子が役立つこともある。あるいは、社員の健康管理の一環として、モニターの高さ、距離、姿勢などの医学的見地からの啓蒙を行うことで、健康面でプラスに働いたという結果もある。
4. 最高の機器 = 最高のパフォーマンス
美しく、新しい仕事は可能性に満ちている。フレキシブルな仕事、テレワーク、ビデオ会議など、無限の可能性を秘めた旅が始まっている。もちろんこれは社員が適切に配属されている場合にのみ可能なことだ。社員が週末でも休日でも働くことを望む場合には、会社のスマートフォン、モバイルパソコンも支給することになるだろう。ただ多くの企業は、この投資までは至っていない。
5. シナジー効果
特に上場企業では、労働者は株主に次ぐ2番めに多い。耐えず解雇や、部門合併による合理化、アウトソーシングなどのシナジー効果により、社員は純粋に恐怖を抱いている。彼らは仕事を続けることで、同僚について、将来についての不安やストレスがある。最高のパフォーマンスを出すための最適な環境ではない。この恐怖は麻痺し、拍車をかけることはない。
以上が「Capital」に掲載された5つの一般的な理由だが、生産性の高いことで知られるドイツで掲載された記事といえども、そのまま日本にも当てはまることのようだ。