東名高速で夫婦２人が死亡するという痛ましい事故が起こり、「あおり運転」や「ロードレイジ」などの危険運転は誰もが加害者にも被害者にもなる可能性があり、社会的に大きな関心を集めています。アンガーマネジメントはこれらの危険運転防止のためにも非常に役立つスキルです。さあ、具体的にその３つのメソッドについて話を進めましょう。

衝動のコントロール　（６秒）
アンガーマネジメントでは、“怒りの感情”のピークは「６秒」と考えます。
“怒りの感情”により副腎からアドレナリンが分泌され、交感神経が刺激され全身が戦闘モードになります。そのアドレナリンが細胞に吸収される時間が、約６秒というアメリカでの研究結果にもとづいています。
ポイントは、“怒りの感情”のピーク６秒の間に反射して行動をしないようにすることです。
“怒りの感情”にすぐ反射して行動してしまい、取り返しのつかないことになってしまった例は枚挙にいとまがありません。
したがって、“怒りの感情”のピーク６秒をいかにやり過ごすということが、「衝動のコントロール」です。具体的なテクニックとしては、大きく深呼吸（呼吸リラクセーション）、６から１まで数える（カウントバック）、その“怒りの感情”を手のひらに書いてみることなどです。
そうすることによって、すぐに反射しないで一拍おいて自分の行動を選択することができます。

思考のコントロール　（３重丸）
私たちはいろいろなテーマについて自分なりの考え方、価値観を持っています。いわゆる「べき」で、そういう「べき」と目の前の「現実」とにギャップが生じた時に、私たちは“怒る”のです。このように“怒る”原因は私たちの外側ではなく、内側にあるのです。だからコントロール可能なのです。
私たちの「べき」の分布を、３重丸でイメージしてください。中心に①自分と同じ「べき」、真ん中に②自分と少し違うが許してもいい「べき」、一番外側は③自分とは違う「べき」です。これを「べきの境界線」といいます。私たちが“怒る”のは、①と②はＯＫゾーンで、③がＮＧゾーンということになります。③の「べき」の現実を目の前にしたときに、私たちは“怒る”のです。
したがって、①と②のＯＫゾーンをできるだけ拡げる努力をして安定させ、それを人に見せ、相手やその時の気分によって変えないということが大事で、これが「思考のコントロール」です。
そうすることにより、“怒りの感情”（“イライラ”“カチン”）は減少します。

行動のコントロール　(分かれ道)
これは「べきの境界線」③のＮＧゾーンの出来事、つまり“怒りの感情”（“イライラ”“カチン”）の出来事に対して、どう行動をコントロールするかということです。
“怒りの感情”の出来事を、次のように分類してください。まずその出来事は変えられるかどうか、次にその出来事は重要であるかどうかです。
①：変えられて重要なもの　②：変えられて重要でないもの　③：変えられなくて重要なもの　④：変えられなくて重要でないもの、４つのマトリックスになります。これをしっかりと区分けし認識することが大事で、その区分けにより次のように行動します。
①：いつまでに・どのように・どの程度改善するかを決めて、変える努力を具体的にする　②：①の出来事を最優先して変える努力をしてその目途がついたら、①と同じように取組む　③：現実を受け入れ自分ができる選択肢を探す　④：放置する
これによって変えられる出来事について何もしないで“イライラ”するとか、変えられない出来事について“イライラ”して振り回されるようなことがなくなります。
アンガーマネジメントは誰にでもできる簡単な心理トレーニングです。ぜひこの３つのメソッドを日頃から実践してみてください。次回は、“叱り方”　が苦手の人のための「アンガーマネジメントの叱り方」をお話します。