ストレスを発散・解消する / シマウマとマインドフルネス

なぜシマウマは胃潰瘍にならないか

神経科学者のロバート・サポルスキーの著作の中で「なぜシマウマは胃潰瘍にならないか-ストレスと上手につきあう方法( RobertM. Sapolsky 、翻訳:森平慶司 、監修: 栗田 昌裕 、出版社:シュプリンガー・フェアラーク東京)」があります。
ストレスなどによる心の変化は、心的側面だけでなく、体の変化や病気に繋がります。例えばストレスと癌、ストレスと免疫系なども記述され、どのようにストレスとつきあうべきなのか、実際的なアドバイスを述べた書籍です。 もちろんタイトル通り、シマウマがなぜ胃潰瘍にならないのかも記述されています。そのメカニズムを人間との違いで述べています。

シマウマは、ライオンに出会うとストレス反応を生じます。しかもいつどこでライオンに遭遇するか分からない環境に生きています。
同じ環境で人間だったら、どうでしょうか?

ライオンの存在に怯え、日常の生活でも極度の緊張が継続することでしょう。おそらく相当のストレス状態といえるかもしれません。戦時中の緊張感も同様といえるでしょう。胃潰瘍になっても不思議ではありません。

ところがシマウマには、そのような緊張感がありません。
なぜならライオンの恐怖が去り、日常生活に戻ると、例えば休んでいるとき、餌を食べているとき、水を飲んでいるとき等々では、ライオンのことを忘れてしまっています。全くの平常の状態です。
ライオンの恐怖が頭からすぐに抜けるので、人間のように極度の緊張感は持続しません。だから人間のように胃潰瘍にはならないのだといいます。

おそらく脳の機能がシマウマと人間では大きく異なるためでしょう。人間はライオンが身近にいない状態でもライオンを思い出し、そのときの恐怖も蘇るため、ストレス反応が起こってしまいます。しかしシマウマの脳はそこまでの機能がないのでしょう、完全に忘れることで平穏な日常生活を送れるというわけです。

だとしたら、人間も意図的に恐怖や嫌なことを忘れれば、ストレス発生を防げることになるのでは?

職場で嫌なことがあれば、その場でストレスが生じます。シマウマがライオンと遭遇するのと一緒です。
しかし人間の場合、それだけで終わらないことが多くあります。帰宅後、何かの契機により突然思い出し、そのときの感情が蘇り、あるいは猛烈にイライラしたりすることもあります。寝るというリラックス状態のときですら、思い出してしまうことでストレス反応が生じることもあります。

嫌なことを思い出すことが継続的になれば、慢性的なストレス状態に陥ります。
シマウマのように忘れてしまえば、実に気が楽になります。しかし人間の脳は同じように忘却することは難しいのが現実です。

そこで人間ならではの方法として「マインドフルネス」というのもありかもしれません。

マインドフルネスとは

マインドフルネス(mindfulness)とは、今この瞬間に起きている内面・外面的経験に注意を向けるもので、否定的な感情や物事にとらわれることなく、自分自身を取り戻すことができるものです。
何だか分かりにくい表現のせいか、一般的には「瞑想法」のような扱いになっていますが、実際は瞑想はマインドフルネスのための手段といえます。

マインドフルネスは「良い」「悪い」といった判断をしません。あくまでその瞬間に意識を何かに集中的に向けている状況です。例えば、日常で自然に行っている呼吸でも意識を集中させても良いわけです。重要なのは、意識が呼吸に集中していることから、ストレスの原因となる嫌なことを思い出さなくなる点です。
そのため、マインドフルネスの手法として瞑想やあるいは禅などが用いられたりしてるわけです。

シマウマとの対比で考えてみましょう。
シマウマは自然にストレス要因を忘れます。人間は時々ストレス要因を思い出してしまうので、今この瞬間の行動に集中することで、嫌なことを思い出させないようにします。いつものことをいつも以上に感じ取ること、これがマインドフルネスです。マインド(つまり、心)がフル(つまり、満たされている)状態にし、この瞬間に全意識を向けることによりストレス要因を消し去ります。

このマインドフルネスは、パーリ語のサティ(sati)を翻訳したもので、もともとは仏教が由来のものです。それがアメリカで流行し、日本に入ってきたといわれています。

マインドフルネスに基づく新しいプログラムとして有名なのは、Googleが2007年に開発した「Search Inside Yourself」です。
最新の脳科学に基づいて開発したリーダーシップ・パフォーマンス向上のプログラムです。これは心の知能指数における「5つの要素」(自己認識・自己制御・モチベーション・共感・コミュニケーション)に着目した「心と思考力」を科学的アプローチで強化するというものです。

ただ開発当初は社内の一部に向けた研修プログラムだったようで、やがてそのメソッドが高く評価されるようになると、Googleで最も人気があるコンテンツのひとつになり、さらには世界的な超大手企業やアメリカの政府機関でも取り入れられるようになりました。
分かっているだけでも以下の企業・アメリカの機関で取り入れられたようです。

Facebook  Intel  McKinsey
NIKE  Yahoo
海軍  国防総省  農務省森林局

研修プログラムはさておき、ストレス要因を思い出し、ストレス反応に陥る状態になる場合には、マインドフルネスの手法も同時に思い出してみるのは良いかもしれません。
過去の嫌なことより、今、目の前の「何か」に意識を集中させることができれば、確かにイライラは減少するような気がします。

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