
暑い夏に冷えたビール!
仕事が終わったあとに飲むその瞬間、ビール好きな人は至福の瞬間を迎えます。
その日のストレスも一瞬にして解消するだけのパワーがあります。
実は、日本官能評価学会誌 Vol.1 No.1 (1997年3月)では、自身で「ストレスを感じている」と自覚している人ほど、苦味のある食品を美味しいと感じる傾向があると書かれているようです。ビールといえば「苦味」です。この苦味には疲れた味覚をリセットして、落ち込んだ気持ちをハッピーに転換する効果があるというのです。つまりビールはストレスがある人ほど、「うまい! 」ということになるのかもしれません。
そもそも苦味というのは、人間にとって本来は積極的に好む味とは正反対のものです。にも関わらず、苦味が前面にくるビールがここまで親しまれているのは、やはりそれなりの理由があるということでしょうか。
ただビールというと、「太る」とうイメージもあるようです。
果たして本当にそうでしょうか?
実は意外なことに思えるかもしれませんが、明治時代には、ビールは薬局で売られていたのです。栄養成分豊富な健康飲料だったわけです。
ではなぜ、「太る」と思われるようになったのか、という問題ですが、ここでも「苦味」が関係してきます。
ビールの苦味はホップから出るものですが、この苦味には胃腸の消化液や唾液の分泌を促進する働きもあるのです。さらにビールといえば炭酸ですが、この炭酸には胃腸の動きを活発にする作用があるといわれます。そのためビールを飲むとついつい食が進んでしまうので、こってりとした料理も過剰に摂取してしまい、結果として「太る」危険性もあるということでしょうか。
そう考えると、もしかしたら苦い漢方薬も炭酸を入れれば、ビールと同じように食が進むのかもしれません。
ビール単体で見た場合には、栄養面で優れています。6種類のアミノ酸、17種類のビタミン、14種類のミネラルなどがあり、何と50種類以上の栄養素が含まれているのです。ビール酵母にも注目です。必須アミノ酸やビタミンB群だけでなく、食物繊維やミネラルも豊富に含まれています。まるでサプリメントに表記されているみたいです。
日本では薬局で売られていたように、欧州では「液体のパン」とも呼ばれているほどでした。脚気予防の飲料でもありました。古代エジプトでは、女性の洗顔に使われていたという説もあるようです。
では、ビールの泡についてはどうでしょうか。
さすがに泡には栄養がないようにも思えますが、実は泡の正体というのはタンパク質や炭水化物で、ホップ成分に包まれた炭酸ガスの気泡です。つまり、泡もビールの液体部分と別の成分ではないということです。
最後に気になる点ですが、これもイメージとしてビールはカロリーが高いのではないかという点です。
一般的にビール100mlのカロリーは39kcalです。ご飯1膳(140g)が168kcalですから特別にビールが高いとはいえません。
さらに他の飲料と比較するとその差は歴然です。赤ワイン100mlのカロリーは75kcalで、ビールより高いことが分かります。さらに日本酒では110kcal、極めつけはウイスキーの242kcalです。
もっと驚いて頂きましょう。同じ量で比較した場合、牛乳は68kcalです。ビールのほうがカロリーが低いのです。
肯定的な要素をこのように並べるより、まずはビールを飲む!
おそらくそれがすべてを物語っている気がします。仕事が終わってから飲むビールは人間関係の潤滑油になります。明るい飲み物がビールで、盛り上がったりするのもビールです。
そういえば以前にミュンヘンのホフブロイハウスに行ったときのことです。
ホフブロイハウスとは、日本でいえばビアホールで、ミュンヘンでは観光名所の一つになっていて、外国人観光客も多く来店する店です。マリエン広場から歩いていける距離にあり、1階がビアホール、中庭がビアガーデン、2階がレストラン、3階がショーが催されるフロアです。圧巻なのは1階で、この広さはまるで体育館です。
ここに入った際、「Oktoberfest」などでビールの乾杯の時に歌われる酒宴の歌「Ein Prosit」に負けないほどの声量で、「六甲颪」(ろっこうおろし)を熱唱する声が聞こえました。ドイツ独特のビアホールの雰囲気の中で、突如聞こえてきた「六甲颪」は、いきなり関西の居酒屋へ迷い込んだほどのインパクトを与えました。忘れられないシーンです。
異国の地で阪神タイガースの歌に熱狂する人たちは、まさにビールで酔い加減になって盛りがったのかもしれません。
考えてみれば、落ち込んだときにワインやウィスキーを飲む姿はあっても、ビールには似合わない気がします。
ビールを飲んで陽気になって、暑さもストレスも解消する、結局それが結論です!
Ein Prosit der Gemütlichkeit