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「働き方改革」の陰に「ブラック士業」

全国社会保険労務士会連合会(大西健造会長)は、「働き方改革実行計画」に基づいた施策を円滑に実施できるように支援活動を展開するという方針を決定した。
働き方改革に関する関係機関からの協力要請に対して、社会保険労務士が積極的に情報を発信していくとともに、企業の「経営労務診断」や「労働条件審査」も推進することで労働環境の改善につなげるというものだ。従って社労士は労使どちらかの立場ではなく、それぞれを尊重し、労働環境を整備していくという取組みのようだ。
鳥取県では、中小企業の労働環境改善をサポートするための「働き方改革支援相談窓口」を鳥取県の社会保険労務士会(山田春夫会長)内に開設した。就業規則の改定などは、直接の指導・支援として社労士を無料で派遣することになっている。
このような流れがある一方で、忘れてはならないのが「ブラック士業」の存在だ。
この「ブラック士業」として有名になったのは、ネット上で大炎上する騒ぎとなった「モンスター社員を解雇せよ! すご腕社労士の首切りブログ」と題されたブログだろう。
「社員をうつ病に罹患させる方法」「強烈な合法パワハラ与え」る等々、うつ病に追い込むよう指南した内容で、アドバイスとして「万が一本人が自殺したとしても、うつの原因と死亡の結果の相当因果関係を否定する証拠を作っておくこと」とまで書かれていた。
これに対して愛知県社会保険労務士会は、「社労士の信用、品位を害した」として3年間の会員権停止処分と退会勧告を行った。
日本労働弁護団や全国過労死を考える家族の会が監督官庁の厚生労働省に監督要請もした。
求人詐欺の判決でもブラック士業が関係していたこともあった。
求人票と異なる労働契約を締結させられたことに対する裁判だった。
会社側は求人票について、社労士からの助言を受け、多くの人が応募してくるように作成した旨を供述していた。つまり求人票の内容は応募者を増やすためだけの目的だったことになる。
ブラック社労士が法律の抜け道を指南することで、悪質な求人詐欺はかなり蔓延しているようだが、この裁判では労働契約締結後でも無効になる可能性を明確に示すものだった。
ブラック士業とは、ブラック企業に悪質な入れ知恵をする弁護士や社会労務士などをいうが、なぜ国家資格を取得し、このような悪事に加担しているのだろうか?
最も容易にできる想像としては、本業でやっていけないからということになる。弁護士はもちろん、社労士も簡単に資格を取得できるものではない。しかし難関資格を持っているからといって安泰な生活が保障されるわけではなく、実際には人材流通でみた場合に資格者の過多という状況も生まれる。試験の規制緩和なども手伝い、資格はどう取得するのではなく、合格後にいかに活かすかの時代になっているといえる。
まともな仕事にありつけない有資格者にとって、安易に稼ぐ手段としてこのようなブラック士業が誕生するのかもしれない。犯罪まがいのことが儲かるのは世の常かもしれないが、ブラック企業を支えるブラック士業とは、資格者のモラルだけの問題ではすまないといえるだろう。