
2000年代にパワハラ(パワーハラスメント)という言葉が誕生して以来、何かと目や耳にする機会も多くなっているような気がします。でも、そもそもパワハラってどこからどこまでを指すのでしょうか。
厚生労働省では下記のように定義しています。
【パワハラの定義】
「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」
この中には社内いじめや嫌がらせのほか、過大・過小な要求や個の侵害も含みます。
それでは、パワハラ第1回目として、「これってパワハラ?」という身近で起きうるについて裁判事例を参考に1問1答形式で考えていきましょう。
事例1 飲酒の強要
Q1 私はお酒に弱い体質です。接待の席で上司にお酒を勧められましたが、体調が不安なため断りました。すると上司が激怒し、「俺の酒が飲めないのか!」「酒は吐けば飲めるんだ!」と強要されました。飲酒後に倒れてしまい、結果緊急搬送されました。これってパワハラですか?
A1 ○
パワハラにあたると考えられます。肉体的な苦痛を与えている点で迷惑行為を超えて不法行為にあたると判断されます。
昨今、無理な飲酒の強要による死亡事故も増えています。特に職場のマネジメントの立場にある方は、アルコールに対して無理している人がいないか気配りも必要です。
事例2 私的な雑用の強要
Q2 先輩社員から個人的な用事のために車での送迎を依頼されました。業務時間外で別の予定も有ったため断ったところ、それ以来職場で無視されるようになり業務の引き継ぎなどに支障が出ました。これはパワハラですか?
A2 ○
先輩―後輩の関係で先輩に優位性があるのは明らかですし、私的な用事を断った結果が業務に影響を及ぼしたという因果関係が証明できれば立派なパワハラになるでしょう。軽い気持ちで依頼されたのかもしれませんが、公私混同の行き過ぎは禁物です。
事例3 暴力
Q3 仕事でミスをしてしまい、先輩社員に怒られ何度か顔や腕を殴られました。先輩は指導の一環だと言っていますが、これってパワハラですよね?
A ○
立派なパワハラです。身体的な攻撃は刑事罰にも該当しうることです。暴力は、指導する上で業務の適正な範囲を超えています。ミスの原因や再発防止策を一緒に考えるといった冷静な対応こそ真の指導です。
事例4 悪口
Q4 同期の社員数名から個人的な交友関係について執拗に問いただされました。そのことについて悪口を言われています。他の社員がいる前でも悪口を言っているようです。業務とは関係のない内容ですが、仕事をするのが嫌になるくらい精神的に辛いです。これもパワハラになりますか?
A4 地位などに関係なく、職場関係を悪化させるような内容ですので、充分なパワハラになります。
今回は複数名の社員が他の社員の前で悪口を言っているため、明らかに相談者よりも優位な立場での行為になっています。精神的な攻撃や個の侵害にもあたります。
このように、パワハラとは相手の地位に関係なく、業務の適正な範囲を超えて起こるあらゆる行為を指しますから、上司と部下、先輩と後輩といった一般的な上下関係において注意をようすることはもちろんですが、同僚間においても起こり得る実は繊細な一面があるのがパワハラです。
ヨコイ・マネジメントパートナーズ
パートナー 高橋 久美子