食料品販売店「スーパー玉出」（大阪市西成区）と、同社の男性人事部長（41）に対する裁判の判決が出た。
外国人留学生らを法定の上限時間を超えて働かせたとして、入管難民法違反（不法就労助長）の罪が問われた裁判で、判決公判は2月8日だった。

関西圏の人でないと、あまり馴染みがないスーパーだと思われるかもしれないが、今年1月13日朝のスポーツ紙で「SMAP解散」が報じられた際、その見出しよりも隣に掲載されていた広告を見て「スーパー玉出の文字に目がいく」という指摘がツイートされインターネット上で話題になった会社でもある。

このスーパー玉出は、本社が大阪市西成区玉出で、大阪府に54店舗、兵庫県尼崎市内に1店舗を展開している。大阪市内だけでも33店舗あり、2007年度の年商は約450億円だという。
黄色と赤の派手な外装の建物で、大阪名物・大阪珍風景などともいわれるほどのインパクトがあり、24時間営業（一部店舗を除く）、年中無休などで店舗を運営している。また大阪らしい商売ともよばれ、テレビ番組の取材を受けることも多い。
とにかく徹底した低価格路線を貫いているのが特徴で、有名なのは「1円セール」。しかもこれは随時開催している。実際にはネーミングほど衝撃的なセールではなく、ある程度の額を購入した顧客に対して特定の商品を1点限り購入できる等々の制限があったりするのだが、スーパー玉出の名物なのは間違いない。また、肉類も「1グラム1円」とする場合もあり、この場合には制限がないようだ。

ところで本社の所在地だが、大阪の西成といえば、日本最大のドヤ街があることでも知られ、生活保護受給者の割合が多い地域でもある。
釜ヶ崎周辺はあいりん地区で、他の大手スーパーの進出していない特殊な地域といえる場所だが、この周辺に今池店、新今宮店、花園店、天下茶屋店がある。それだけこの地域に集中しているのも、低価格路線のスーパーだけにマーケット需要を満たしているといえるかもしれない。そのためには人件費という固定費を抑える必要があるのは間違いないのだが、外国人留学生の安い人件費で長時間労働をさせることで成立しているのではという疑念を持たれてしまう事件だったともいえる。

創業以来、店舗展開は低価格需要の強い大阪市南部を中心にして、特に本社周辺から拡大路線を続けていたのだが、2009年には北区の天神橋筋商店街に出店した。大阪を代表する商店街に、パチンコ屋の居抜きで出店したことで、派手な外観からかなり異質な店舗が誕生したことになった。
2010年には始めて大阪府を飛び出し、兵庫県尼崎市に出店したが、大阪府外ではまだ1店舗のみとなっている。京都や東京への進出も視野に入れているという話もあるとのことだが、今回の裁判の結果が今後どのように影響するかはわからない。

今回の判決は、大阪簡裁で開かれたもので、柏森正雄裁判官は求刑通りの判決をくだした。スーパー玉出に罰金100万円、人事部長に罰金70万円という結果だった。
この事件はそもそも2016年8月に、大阪府警外事課により社長ら幹部3人と法人としてのスーパー玉出を、入管難民法違反（不法就労助長）容疑で書類送検したことに始まる。スーパー玉出のホームページで、代表取締役の言葉として「今後はコンプライアンスの遵守を徹底するとともに、大阪府警の捜査には全面的に協力させていただいております」も掲載されているのは、おそらくこのことを受けてのものだと思われる。
実は、昨年10月に大阪区検がスーパー玉出と人事部長を入管難民法違反（不法就労助長）で略式起訴となっていた。しかし大阪簡裁は略式命令は不相当と判断することになったという経緯もある。
その結果、通常の公判を開いて審理することになったものだ。