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過労死防止の緊急対策と厚労省発表の実態

昨年の電通の新入社員の過労自殺はまだ記憶に新しく、社会的な関心の高さを見せた。
厚生労働省は昨年末に、過労死防止のための緊急の長時間労働対策を発表した。大きく変わったのは、従来からの違法な長時間労働をさせていた企業の社名を公表していたものの、その数は1件だけだったことから、基準を広げ、対象を広げるように見直すとした。
具体的な緊急対策としては、以下の点が挙げられる。
・サービス残業をなくすため、自己申告と実際の労働時間がかけ離れている場合、企業側に実態調査をさせる。
・是正指導段階での企業名公表の要件に、違法な長時間労働による過労死や過労自殺(未遂を含む)の発生を追加。
・違法な長時間労働が複数の事業所で確認された企業は、本社の幹部を直接是正指導。
・残業時間の上限を労使協定(36協定)で定めていない企業への指導を徹底。
・企業側の暗黙の指示で自己啓発をしていた時間は労働時間。
年が明けて1月17日、今度は厚生労働省が昨年の4~9月に労働基準監督署が立ち入り調査した結果を発表した。
全国約1万の事業所の中で、約44%の事業所で違法な長時間労働を確認し、是正勧告したという内容だった。
厚生労働省は2015年度から立ち入り調査の結果を発表しているが、今回の調査から変更点が生じた。
調査対象の事業所を「月100時間超の残業の疑い」から「月80時間超」にした点だ。つまり過労死ラインとされる残業時間に基準を変更したことで、立ち入り調査の数は前年同期の4,861事業所から10,059事業所にまで増加した。倍増以上の結果となった。
また、長時間労働の疑いで是正勧告した事業所も、前年同期の2,917事業所から4,416事業所になった。こちらは倍増までいかなかったもののかなりの急増である。
この中で残業時間が月80時間超だったのは3,450事業所で、是正勧告した事業所の約80%に及んだ。
さらに月200時間を超えていたのが116事業所もあった。
緊急対策以前の実態を発表したことになるが、過労死ラインを超える残業が一般企業の中で当たり前のように横行していることが改めて明らかになったともいえる。