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今、改めて考える東芝うつ病・解雇事件
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創業140年を超える国内有数の名門企業・東芝が、歴代の3人の社長が辞任に至るという稀に見る不正会計処理の事件はまだ記憶に新しいかもしれない。
しかし東芝では会計処理の問題とは別に、労働事件も過去に多く発生していることに注目したい。
その中でメンタル部分について、改めて考えてみるのも大きな意味があると考える。
平成23年2月23日の東京高判労働判例1022号5頁「東芝うつ病・解雇事件」である。
東芝がうつ病で休職していた元女性社員を解雇したことが契機となり、その解雇された元社員は業務が原因による労災であるとして、解雇の無効と慰謝料の請求を求めて起こした裁判だ。
東京地裁は「被告が、原告の業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して心身の健康を損なうことがないような配慮をしない債務不履行によるものである」とした。
原告の元社員の業務はかなりハードなもので、業務以外に鬱病を発症させる原因は無いとした。さらに被告の東芝側に安全配慮義務違反があるとして、解雇の無効、未払い賃金、慰謝料等の支払いを命じる判決となった。
裁判で注目されたのは、被告の東芝側が「元社員が病気のことを会社に言わなかったので対応が取れなかった」と主張した点だ。この主張が認められた場合は、元社員が自身のメンタル的な病気についても報告しない限り、会社側は責任がとれないということになる。
しかし法廷では、原告の通院歴や病名について、一般の社員であれば「プライバシーに関わり人事考課にも影響しうる情報」をあえて報告することは現実的ではなく、会社側に知られないように働き続けようとするのが当然という主旨の指摘がなされた。
結局裁判では、東芝側について、たとえ病気等の「申告がなくても、労働環境などに十分な注意を払うべき安全配慮義務を負う」と判断されることになった。
ちなみに東芝は、この事件に関連して、原告の業務内容の隠ぺい工作、地裁判決後の控訴手続き等によりさらに争う姿勢を見せた。原告側の主張では、東芝の寮に住んでいた関係で、組織ぐるみの嫌がらせも行われたという報道もあった。
控訴審中に、この元社員は国に労災認定された。
これに対し、東芝は徹底抗戦をするために、東芝の産業医の意見書を提出したりもしていた。
最終的に東京高裁も業務とうつ病の因果関係を認めることになり、解雇を無効とし、東芝は再び敗訴するに至った。
最高裁判決は平成26年3月24日、第2小法廷により原告の全面勝訴が確定した。
最高裁では、メンタル的な病気に関して、他の身体的病気よりも会社側に開示しづらいことであるから、雇用する会社側はその状況を踏まえた上で労働者の健康に十分な注意を払い対処する義務を負うという内容になった。
改めてこの東芝での事件をふりかえると、「電通」の「過労死」の問題とあわせて、メンタル部分にも全く同等に扱う必要性を世間に示したという意味で大いに意味を持つといえるだろう。