國安 耕太コラム~あなたの会社は大丈夫?:4.未払残業代請求1

先日(平成29年10月20日)、つぎのような報道がありました。
 
「日本放送協会(NHK)の山口放送局(山口市)で残業代の未払いがあったとして、山口労働基準監督署(同)が先月、労働基準法違反で同放送局に是正勧告を出していたことがわかった。勧告は9月29日付。
関係者やNHKの説明によると、同放送局に勤める一部の職員が申請した勤務時間が、タイムカードで記録された労働時間より短くなっていたことが労基署の調査で判明。労基署から残業代が未払いになっている可能性があると指摘されたことを受け、NHK側が同放送局内の勤務時間の実態を調べた結果、今年4~6月に、11人の職員に計約9万2千円分の未払い残業代があることがわかり、労基署から是正勧告を受けたという。」朝日新聞デジタルニュース(2017/10/20 15:06)
 
この事件は、NHKの山口放送局が、山口労働基準監督署から、労働基準法違反で是正勧告を出されていた、というものです。
このように、近時、未払残業代をめぐって、労基署の調査や勧告がなされたり、訴訟や労働審判が申し立てられることが増えています。

*平成25年度地方裁判所における労働関係事件新受件数
               労働審判       民事訴訟
賃金手当等
(主に未払残業代請求)   1456件      1929件
解雇・雇止め        1670件       941件
退職金            114件
それ以外の金銭目的      388件       295件
その他             50件       176件

平成25年と少し古い統計ですが、1年間に新たに申し立てられた賃金手当等に関する紛争は、労働審判1456件、民事訴訟1929件の合計3385件となっています。

全国の会社の数が、382万社(中小企業庁調べ)であることと比べれば、実際に賃金手当等に関する紛争が生じる会社は一握りかもしれません。

しかし、賃金手当等に関する紛争が生じた場合、一時期話題となったマクドナルド事件(東京地判平成20年1月28日、判タ1262号221頁)のように、1人あたり数百万円の支払いを求められる可能性もあり、会社の経営基盤に重大なダメージを与える可能性があります。

また、近時、働き方改革が叫ばれ、労働時間を巡る世間の視線は厳しいものになってきています。

そのため、労働時間の管理を適切に行っていくことは、会社の維持発展には必要不可欠といえます。 

ちなみに、一般的に未払残業代請求と言われていますが、法律上「残業代」という概念は存在しません。

法律上は、「労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては・・・割増賃金を支払わなければならない」(労働基準法37条1項)とされており、一般的に、残業代請求と呼ばれているものには、早出の場合や、休日労働の場合も含まれている「割増賃金」の請求、ということになります。

そして、休憩時間を除いて、1日8時間もしくは1週間40時間を超えて労働させた場合または休日に労働させた場合に、割増賃金の支払義務が生じます(労働基準法32条、37条1項)。

では、具体的にどのような要件を満たしていれば、労働時間と認められるのでしょうか。
 
判例では、労働時間といえるかどうかは、 
「労働者の行為が使用者の指揮命令下におかれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まる」とされ、 
使用者の指揮命令下におかれたといえるかどうかは、 
「労働者が、就業を命じられた業務の準備行為等を事業所内において行うことを使用者から義務付けられ、または、これを余儀なくされたとき」は、「特段の事情のない限り、使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができ」るとされています(最判平成12年3月9日民集54巻3号801頁、三菱重工長崎造船所事件)
 
このように、労働時間にあたるか否かは、使用者の指揮命令下におかれたといえるかどうか、すなわち、使用者から「義務付けられた」または「余儀なくされた」といえるかどうかによって判断されることになります。

そして、この使用者の指揮命令は、明示のものである必要はなく、黙示のもので足りると解するのが通説的な理解です。

近時の裁判例でも、従業員が時間外労働を行っていることを会社が認識しながら、これを止めなかった以上、少なくとも黙示的に業務命令があったものとして、使用者側の時間外労働を命じていないとの主張が排斥されています(大阪地判平成17年10月6日労判907号5頁、ピーエムコンサルタント事件)。

そうすると、労働時間ではないと判断されるためには、使用者が、労働者に対して業務を禁止していたにもかかわらず、労働者がかかる業務命令に反して業務を行っていたといった状況がなければ難しいと思われます。

会社としては、思わぬところで労働時間とされ、予期せぬ損害を被ることのないよう、しっかり労務管理を行うようにしましょう。

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