日本人に限らずストレスの問題は万国共通といえる。
しかしストレスの原因はその国ならではの事情もあるだろう。有名な国でも個人的なつきあいのある人を除けば、その国のローカルなメディアに触れる機会もなく、いわゆるお国柄の情報とは無縁といえるかもしれない。そこで今回はスイスのビジネス誌「BILANZ」のWEB版で掲載された記事「Schweizer haben zu wenig Zeit für zu viele Dinge」をもとに、スイスの事情を考えてみる。

まず、スイス人の3人のうち2人が、しばしばストレスを感じるという。
おそらく日本人でも同じような数値になるかもしれないが、ストレスを引き起こす理由が異なる。
スイス人は仕事、趣味、家庭、友人、家族すべてを日常生活に組み入れているため、どうしても時間が不足してしまい、ストレスを感じてしまうという。日本人の日常生活では、平日はそこまでを包括的に考えていないだろうが、スイス人は平日・週末関係ないようだ。

スイスは連邦国家で、公用語も4種類（ドイツ語・フランス語・イタリア語・ロマンシュ語）あり、国内には多くの国際機関の本部が置かれていることで知られている。
そのような国なので、統一的な価値観があるのかどうかは分からないのだが、日本人よりも日常生活に望むことに対して欲張りなことはあるのだろう。

記事によると、この傾向についてはチューリッヒ研究センターによって発表された研究の結論だという。
多くのスイス国民にとって、生活の中で、時間の要求は容易に解決できるものではない。わずかに成人の3分の1に過ぎない人だけが、時間不足がそれほど問題視されていない程度といえる。

この時間不足のストレスについて、女性は男性よりもストレスが強い傾向があるという。
ストレスを受けている割合について、女性の約半数が「時々」、約30％が「頻繁に」という結果だった。女性が男性に比べてより多くストレスに直面していることは注目に値する。 女性の35％は、しばしば、またはほとんど常にストレスを受けているという結果に対して、男性の場合は約25％だという。

週の典型的な時間の使い方として、食事、テレビ、趣味に費やす平均時間は5時間で、回答者の10人に9人は「短すぎる」という。運動・スポーツの時間、友人との時間、親やパートナーとの時間などが不足しているため、それらの時間を望んでいる。

スイス人のおよそ半分は、仕事、心配事、プレッシャーなどの個人的な抑圧がある。また3分の1の人は、残業、ビジネスのメール、勤務時間外の電話などが原因になっっているという。
またストレスの原因として、約5分の1はソーシャルメディアだという。同時にテレビやインターネットについては45％がストレス解消の側面があるともいう。ただし、解消という面では、自然に勝るものはなく、半数以上の人が屋外で過ごす時間が最もリラックスしているという。
この点についてはアルプスを抱えるスイスならではの環境も影響しているかもしれない。

この研究結果では、ストレスが生活状況にマイナスの影響をあたえている点が挙げられる。生活の領域がバランスを保っている場合にはストレスが多くなく、時間不足を訴えている人と比較して4倍以上も生活満足度が高いという結果だった。

この調査はまた、時間についての願望にもふれている。
フルタイムの従業員の3分の2の人は、もし自由な選択肢があるならば、仕事量を減らしたいと考えている。 ところが実際には経済的理由や、社会的な影響によりこの願望は封印されていると、研究者は語っている。
働くことへの欲求は、調査によると、雇用の面だけでなく、定年時にも現れていた。回答者の半数は60歳で定年退職することを選択し、この歳で退職しない人も65歳では働くことをしないと考えている。

この調査では、柔軟な勤務時間で雇用された人の過半数が、その雇用方法について肯定的な意見だった。54％の人が労働時間が固定化ではなく柔軟性があることを望み、さらに30％の人は労働時間をフレックスにすることを理想としている。固定の労働時間を支持する人はわずかに17％だった。

今回の研究は、9月初旬に7,958人の回答したものをもとにしている。
この回答結果から、スイス人の平均的な労働時間は1日8時間弱、睡眠時間は7時間18分で、働いているかどうかの違いはなかったようだ。ただ例外として既に退職している人だけが平均して約40分長いという結果だった。

スイスの状況をかいまみた気がする。改めて日本と比較してみるのも興味深いかもしれない。