過労死等防止対策白書

厚生労働省が「過労死等防止対策白書」を発表した。※ 厚労省「過労死等防止対策白書
今年で2回目となるもので、過労死等防止対策推進法(議員立法により平成26年成立・施行)に基づき、国会に報告を行う法定白書になる。64ページにまとめられてる。簡単に各章について、部分的ではあるが以下にまとめてみた。

第1章 労働時間やメンタルヘルス対策等の状況

平成32年までの目標として、週労働時間60時間以上の雇用者の割合を5%以下にするとなっている。現状では、平成28年は7.7%(429万人)(対前年比▲0.5ポイント(▲21万人)で、平成15、16年をピークとして概ね緩やかに減少しているという結果だった。
性別、年齢層別には、40歳代、30歳代の男性で割合が高いという傾向が出ていた。
業種で見ると、平成28年における「1週間の就業時間が60時間以上の雇用者の割合」は、①運輸業,郵便業(18.1%)、②教育・学習支援業(11.1%)、③建設業 (10.6%)の順に多かった。

地方公務員の時間外勤務時間(約158時間)は民間労働者(年間154時間)とほぼ同じで、国家公務員(年間233時間)より少なく、時間外勤務が1か月当たり80時間超の職員の割合は全体の1.1%だった。
教職員の場合、教諭の1週間当たりの勤務時間は、小学校は55~60時間未満、中学校は60~65時間未満の者が占める割合が最も高かった。

メンタルヘルスケアに取り組んでいる事業所の割合は平成27年で59.7%。しかし事業所の規模が小さいほどその割合が低い傾向にあった。
仕事や職業生活に関する強い不安、悩み、ストレスを感じる労働者の割合は50%を超えていた。特に「仕事の質・量」が原因でストレスを感じる労働者が多いという結果だった。

職場での「いじめ・嫌がらせ」に関する相談受付件数は、相談内容として最多の70,917件(22.8%)であり、件数も年々増加傾向にある。

第2章 過労死等の現状(民間雇用労働者)

脳・心臓疾患の労災補償状況では、請求件数が、過去10年余りの間、700件台後半から900件台前半の間で推移している。支給決定(認定)件数は、平成14年度以降、200件台後半~300件台で推移している。業種別に見ると、請求件数、支給決定(認定)件数ともに「運輸業・郵便業」が最も多かった。

精神障害の労災補償状況では、請求件数が、平成21年度以降、1,000件台で推移している。支給決定(認定)件数は増勢傾向となっていて、平成24年度以降400件台で推移している。
業種別に見ると、請求件数は「医療・福祉」、支給決定(認定)件数は「製造業」が最多だった。

第3章 過労死等をめぐる調査・分析結果

「脳・心臓疾患」で労災認定された業務上事案は、 「運輸業・郵便業」が464件と最も多く、次いで「卸売業・小売業」が229件となっていた。しかし、労災認定された業務上事案を雇用者100万人当たりでみた場合には、業種として「漁業」が38.4件と最も多くなった。「運輸業・郵便業」は28.3件で続いていた。
年齢で見た場合、「脳疾患」、「心臓疾患」ともに50歳代、40歳代で多く、29歳以下を除く全ての年齢階級で、「脳疾患」が「心臓疾患」よりも多いということがわかった。

「精神障害」で労災認定された業務上事案は、「製造業」が349件と最も多く、次いで「卸売業・小売業」の290件、「医療・福祉」の230件となっていた。また、労災認定された業務上事案を雇用者100万人当たりでみると、ここでも「漁業」が16.4件と最も多かった。次いで「情報通信業」の13.5件、「運輸業,郵便業」の13.0件と続いた。
年齢で見た場合、30歳代、29歳以下の若年層で多く、男性では30歳代が、女性では29歳以下、30歳代が最も多かった。自殺事案については、男性では40歳代が、女性では29歳以下が最も多かった。
これを出来事別でみた場合、「仕事内容・仕事量の(大きな)変化を生じさせる出来事があった」に該当した事案が最も多く、次いで、「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」となっていた。自殺事案では、「仕事内容・仕事量の(大きな)変化を生じさせる出来事があった」に該当した事案が最も多く、次いで、特別な出来事である「極度の長時間労働」と続いた。

今回は「過労死等の防止のための対策に関する大綱」で「過労死等が多く発生しているとの指摘がある」ものとして挙げられている5業種・職種(自動車運転従事者、教職員、IT産業、外食産業、医療等)について、過労死等の全体像を明らかにする必要があることから、平成28年度は「自動車運転従事者」、「外食産業」について、より掘り下げた調査分析を実施した。

自動車運転従事者は、バス、タクシー、トラックなどの運転手に相当し、時間外労働が発生する理由について労働者調査を実施した。
その結果、どの職種でも「人手が足りないため」が最多だった。特に目立ったのがバス運転手で、58.8%という高い数字が出た。
深夜勤務の回数が多い時期については、どの職種でも12月で、特にタクシー運転者は75.7%となっていた。ストレスや悩みの原因については、バス運転手:「長時間労働の多さ」48%、タクシー運転手:「売上・業績」49.7%、トラック運転手:「仕事での精神的な緊張・ストレス」42.5%、それぞれ1位の理由が異なっていた。

自動車運転従事者の過労死等の防止のためには、長時間労働以外の業務関連のストレス要因への対応(メンタルヘルス対策など)が必要であると白書で記載されている。しかし具体策や労働力不足の現実に対して即効性のある対処法はないというのが実情かもしれない。
これは「外食産業」についても、特に店舗従業員を適正に配置することが必要であるということが記載され、業務関連のストレス要因への対応(メンタルヘルス対策など)が必要であるとされているが、自動車運転従事者と同様に即効性のある解決策はない。

第4章 過労死等の防止のための対策の実施状況

「過労死等ゼロ」緊急対策や働き方改革実行計画にも触れている。その他、民間団体の活動に対する支援等についても触れている。ぜひ全文に目を通すことをおすすめしたい。

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