蒼井凜花コラム~「成功する女性になる」これからの働き方とは~第3回

 「はた楽サロン」をご愛読の皆さま、こんにちは。官能作家・コラムニストの蒼井です。「成功する女性になる」も第3回目を迎えました。
 今回は、私自身の経験を交え「キャリアドリフト」についてお伝えしたいと思います。少し生々しいお話もありますが、どうぞお付き合いください。

 ところで、「キャリアドリフト」とはなんでしょう?
 目標設定し、それに必要な知識、スキル、感覚を身に着けていく「キャリアデザイン」は知っているけれど、「ドリフト」は知らないという方、案外多いのではないでしょうか?
 
 キャリアドリフトとは、節目(就職・転職・結婚・出産など)の大きなできごと以外は、あえて目標や方向性を縛りすぎず、「ドリフト(漂流)」するように変化や環境に身をまかせ、偶然のキャリアを作っていこうという考えです。
 かのスティーブ・ジョブズが大学を中退し、「ただ面白そう」と受けていた「カリグラフィー」の授業での学びが、10年後、マッキントッシュを設計している際に生きたというエピソードは有名です。

 私が六本木のクラブのママから官能作家へ転身した経緯は、初回のコラムでお伝えしました。「水商売は一生やるべき仕事ではない」と悟ったのです。

 ここからが戦いでした。
 小説とは無縁だった自分がモノカキになろうとしたのですから、ある意味、無謀なことです。しかし、ママ業のかたわら官能小説講座を受け、コツコツと執筆を続けた結果、出版社への持ちこみで小説デビューが叶ったのです。担当編集者は「元CAが書くCA官能小説」という、新しいコンテンツに価値を見出してくれました。いわゆる、他者と競合しない「ブルーオーシャン」です。

 他の作家との差別化を図るため、私自身も「CA経験者にしか書けないであろう航空業界のトリビアネタ、ダークな裏話」も盛りこみました。
 もちろん、刊行に至るまでは様々なハードルをクリアせねばいけません。約1年かけて書いた500ページもの長編原稿を「長すぎる」と350ページほどまで削るよう指示されたのです。与えられた期間は2週間。めげそうになりましたが、「今が踏ん張り時」と数日間、店を休み、必死で書きあげました。そして刊行されたのがデビュー作です。

 それからは、クラブのママと官能作家の二足わらじです。2冊目刊行に向けて、休日も執筆、執筆、執筆。が、ここでお客さまと店側から大クレームが殺到したのです。「店の仕事をおろそかにするな」とのお叱りでした。
 通常、クラブでは、ママたる者、常連のお客さまからのお誘い(閉店後のお食事や、休日のゴルフなど)があれば、お付き合いすることが暗黙の了解となっています。店以外での交流があるからこそ、義理堅いお客さまは店に通ってくれるのです。
 それが、ある日突然「執筆のため、店以外では会えません」となったのですから、当然の反応ともいえます。

 そこで考えました。休日はどうしても執筆時間を確保したい。ならば――と、常にスマートフォンをデスクに置いて、お客さまからの電話には必ず出るようにしたのです。電話を取れば、明るい声でおしゃべり。「今、頑張って書いてるんですよ」「いつでもご連絡くださいね」。にこやかに対応することで、スマホの向こう側にいるお客さまの声が和らぐのがわかります。連絡を受けるたび、キーボードを打つ手は止まりますが、すぐに気持ちを切り替えて執筆。この繰り返しが、2年間ほど続いたでしょうか。

 店を辞め、2冊目、3冊目と刊行されるころには、雑誌や新聞のインタビュー、対談のオファーも入るようになりました。人と話すことは、CA、クラブママの接客業の経験が大いに役立ちました。作家や編集者との呑み会も、なるべく皆が楽しく呑めるよう、気配り目配り。中には「なんでお酌してるの?」「ホステスの延長?」など揶揄の声もありましたが、私はそうは思いません。どのような場面でも、自分の得意とすることを積極的にギブするのは、むしろ気持ちのいいものです。空きそうなグラスや、吸い殻であふれそうな灰皿に配慮するのは、私にとって呼吸するようにたやすくできること。
 しかも、フォーマルな場と違う「インフォーマルな場」こそ、貴重な情報収集や人脈の構築が可能です。「こんなことを書いてみたい」と何気なく言ったひとことから、連載のチャンスを頂けたこともありました。
「相手とWIN‐WINの関係を築く」これは、今でも自身のモットーとしていることのひとつです。例えば官能のトークイベントでは、「女流官能作家がエッチなトークすること」をお客さまは期待しています。過去の性体験はもちろん、「小説は実体験ですか?」などの問いは、数え切れないほど。その場合も、可能な限りサービス精神旺盛に受け答えます。
 気をつけたのは、決して下品にならないこと。卑猥なトークも、「言葉遣いは丁寧に、品よく」を貫けば、聞き手はむしろ、そのギャップを楽しんでくれます。盛りあがれば、主催者も喜んでくれます。

 官能関連の仕事にも徐々に慣れてきたころ、私の中で芽生えたのは、「官能以外の、女性に役立つものを書きたい」という思いです。
 自分ができることをノートに書きだしてみると、意外にもいっぱいあるではありませんか。趣味としている美容、ダイエット。そして接客術。接客はCAで培った「王道編」と、色恋や口説きを上手にかわして相手との信頼関係を築くクラブママの「邪道編」まで多種多様。その他、「第一印象の重要性」「失礼にならないお誘いの断り方」、「上手なセクハラ対応」なども、過去の経験から多くの女性にアドバイスができます。
 この考えは成功しました。現在、連載中の40代女性をターゲットにした「オトナサローネ」では美容・モテテク・ビジネスマナーを、「はた楽サロン」では、「成功する女性になる」のコラムを書かせて頂いています。その上、女性だけではなく、男女に向けての「モテ」に焦点をあてたトークイベントにも出演させて頂きました。

 CA・モデル・クラブママ時代には、自分が文筆業に関わるとはみじんも思っていません。しかし、作家デビューによって、偶然得た強みが「書く」「話す」「伝える」ことで、様々な方のお役に立てるのです。

 今思うと、これこそが「キャリア・ドリフト」だと確信しています。そして、これからの時代は、予期せぬ偶然も柔軟に受け止め、状況に応じて自分の強みを組み合わせるキャリアドリフトも必要だと思うのです。
「点」にすぎなかったものを、強みの掛け算で「線」でつなげ、世に役立てる――

 1年先さえも不確かな昨今。常に、
・過去に培った自分の価値を見出し、
・環境に合わせて強みを掛け合わせ、
・市場に貢献する。
 これをキャリアデザイン同様、念頭に置いてほしいのです。
皆さんも「強み」を書きだしてみてはいかがでしょう?もしくは、グループラーニングで、互いに伝え合ってはいかがでしょうか?
 人生100年時代。思わぬ強みの掛け合わせが、将来きっと生きてくるはずです。

第4回:「第一印象の重要性・容貌」へ

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