今、ヤマト運輸で起こっていること

インターネット通販急増による取扱量の拡大とドライバー不足による長時間労働が常態化していることで、多くの話題にあがったヤマト運輸だが、長野県では9,485万円の損害賠償を求める訴訟がおきた。
これは長時間労働を起因としたものではなく、同社の長野県内営業所に勤務していた男性(当時46歳)が自殺した原因として、上司からの長期間にわたるパワーハラスメントであったとして、遺族3人が同社と当時の上司に提訴したものだ。

代理人弁護士が記者会見を開いたことで全国的なニュースとなった。
訴状によれば、2012年秋頃から営業所長より人格を否定する暴言や暴行を受け続けた男性が、2014年には鬱病を発祥、その翌年の1月に自殺したというものだった。遺族側は、パワハラをしていた上司だけでなく、ヤマト運輸の対しても適切な労働環境の整備を怠っていたと主張している。

この件について、2015年8月には遺族が労働基準監督署に労災を申請し、翌16年3月には労災認定を受けていた。

代理人弁護士は記者会見で「男性は上司から『小学生以下だ、お前は』『顔を見るだけで殺したくなってくる』などの暴言を受けていた。録音記録もある」と説明した。訴訟では、この記録のほか、男性が作成した被害状況を記したメモや、医師の診断書などを証拠提出したという。

ヤマト運輸は取材に「係争中のため、コメントは差し控える。弁護士と協議した上で、対応を考えたい」としている。

実は2016年にもヤマト運輸では同様の訴訟があった。

同社の支店長だった仙台市の男性(当時47歳)が自殺した原因は、長時間労働と上司のパワハラであるとして、男性の遺族が同社と上司4人に対し、合計で約8,500万円の損害賠償を求める訴えが仙台地裁に起こされたのである。このときの訴えによれば、自殺した男性は2014年に仙台市内の支店長に就任し、月間の時間外労働が110時間を超えていたという。しかも最長では182時間にまで及び、上司からは休日出勤を強制されたという。さらにパワハラとして、この男性が作成した会議資料を目の前で破り捨てるなどされたという。
3ヵ月後、この男性は自家用車内で練炭自殺した。

仙台労基署は業務による強い心理的負担で発症したうつ病が自殺の原因と判断し、2015年6月に労災と認定した。
遺族側は過重労働を強いられ、しかも暴言などのパワハラ行為が頻繁に、しかも継続的にあったことで人格が否定されたという主張をしていた。第1回口頭弁論が仙台地裁であったとき、会社と上司はいずれも請求の棄却を求めていた。それでも会社側は損害額などを争う姿勢を持ちながら、、「不幸な結果に鑑み、早期かつ円満に解決したい」と述べ、和解を求める考えを示した。

また、潜入取材したことのあるジャーナリストの横田増生氏により、ヤマト運輸の現役支店長が女性従業員に対するセクハラで厳重注意受けていたことが「週刊文春」誌上でも取り上げられていた。
その前に、神奈川県内の複数の店で支店長を務める40代の男性は、ある支店で違法なサービス残業があるとして、2016年に労働基準監督署から是正勧告を受けていた。元ドライバー2人により未払い残業代の支払いを求めて労働審判に訴えたことで、2人の訴えをほぼ認める調停が成立した。
ヤマト運輸はこれを契機に全国に調査を拡大し、巨額の未払い残業代支払いへと追い込まることになった。

その後、2015年に別の支店に異動し、支店長の地位を利用して30代の女性従業員に交際を求めるようになったという。その背景には、その女性従業員の雇用形態にあった。いわゆる「日雇い」というスタイルで、これをパートでの雇用契約にした上で、さらに時給も上げるという条件で交際を迫ったらしい。
社内の男性社員には、「オレの彼女だから」というLINEを送信していという。
この取材に対し、神奈川主管支店の支店長から口頭で「厳重注意を受けた」ことを支店長は認めた模様。

労働安全衛生法違反の疑いで、ヤマト運輸と神戸深江支店(神戸市東灘区深江浜町)の男性支店長(47歳)が神戸地検に書類送検された報道も記憶に新しい。
十分な安全対策を怠り、重傷事故を引き起こしたとして、西宮労働基準監督署が行ったものだが、これは支店内の作業現場でフォークリフトを使った運搬作業をしていた際に、派遣作業員の男性(60)を立ち入らせたことで、この男性はリフトにひかれ、右足を切断するなどの重傷を負ったという内容だった。現場に誘導員が配置されていなかったことが問題視された。

このような報道が多くあるヤマト運輸だが、労働環境が急激に悪化したのは2013年だという。
アマゾンの荷物を取り扱うようになってからだというのは、様々な報道で伝えられている。ライバル関係にある佐川急便がアマゾンから撤退したことで、業界シェアを重視するヤマト運輸が引き受けたことに始まる。
その結果、現在では年間17億個超の宅急便取扱数に対してアマゾンの荷物の割合は約3億個で、最大の荷主という関係になっている。しかし、宅急便の運賃はアマゾンに関しては業界で最も安い水準になっているため、営業利益はどうしても下がってしまった。
このような背景が現場に大きな影響を与えたとしても、パワハラ、長時間労働、セクハラが言い訳になるものではないだろう。

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