高度プロフェッショナル制度で残業代ゼロ?労基法改正の是非

高度プロフェッショナル制度の是非

全国過労死を考える家族の会などが主催した「高プロ・裁量労働制の規制緩和に反対し、真に実効性のある長時間労働の規制を求める院内集会」が今年の2月10日に実施された。

開会の挨拶の中で、日本労働弁護団の棗一郎幹事長が、現在の政権による労働基準法改正案によれば、長時間労働の是正策として上限規制を設けるとするとしながらも、時間規制の及ばない「高度プロフェッショナル制度」の問題点や、みなし労働制により実際の労働時間を管理しなくてもいい「裁量労働制の拡大」の危険性について指摘した。「規制緩和と規制強化とまったく矛盾した政策をやろうとしている」という指摘から、「真に長時間労働を規制できる法制」を改めて作成して欲しいと訴えた。

この集会には民進党の蓮舫代表も出席し、安倍政権の「働き方改革」について、「響きはいいが実態はどうなのか。本当に必要なのは規制の緩和ではなく強化だが、今政府が出している労基法改正は真逆だ。最も明確にしなければいけない勤務時間が分からなくなる」と批判した。

また、昨年、過労により自殺した電通元社員の高橋まつりさんの母親・幸美さんもビデオメッセージを寄せた。その中で「娘のように命を落とす人をなくすため、労働時間規制の例外を拡大しないで」と訴えた。

では、ここで指摘されている「高度プロフェッショナル制度」とは何か。
正確には「特定高度専門業務・成果型労働制」のことで、一定の年収要件を満たし、職務の範囲が明確で高度な職業能力を有する労働者について、時間外・休日労働協定の締結や時間外・休日・深夜の割増賃金の支払義務などの適用除外とする労働時間制度のことをいう。つまり通常の労働時間に対する対価ではなく、いわば成果に応じて賃金が支払われる働き方ということになる。
従って極端な話、「高度プロフェッショナル制度」によれば、24時間365日間継続した労働もありえるのではという危惧がある。

もちろん「高度プロフェッショナル」という以上、対象となる業務等の規定もある。
対象業務は、「高度の専門的知識等を要する」とともに「業務に従事した時間と成果との関連性が強くない」などの性質を満たすものとなっている。これだけではあまりイメージしにくと思えるので、具体的な例として次のような業務が挙げられている。
まず、金融商品の開発業務やディーリング業務、企業アナリストの業務、経営コンサルタントの業務、研究開発業務等々だ。これらも細かく見ていくと、労働時間を度外視した成果との関係がどこまであるのか、議論も生じるかもしれない。
しかし、対象労働者としての条件が付加される。
書面による合意に基づく職務の範囲内で労働する者、平均給与額の3倍を相当程度上回ることの2点で、平均給与額については具体的な年収額として、「1075 万円」が目安となっていた。ただこの目安は法案成立後に審議会で検討の上、省令で規定するとのことになっている。

では、上記条件を満たしていれば労働時間を全く考慮しなくて良いのか、ということになるが、労働者である点については他の人と代わらないわけで健康面についての条件もある。
この「高度プロフェッショナル制度」によって雇用している側は、この制度の対象労働者の健康管理時間を把握し、これに基づいて健康・福祉確保措置を講じなければならない。この健康管理時間は、単に「事業場内に所在していた時間」だけではなく、「事業場外で業務に従事した場合における労働時間」を合計した時間となっているのが特徴だ。
具体的には、次のいずれかの制度導入を要件としていて、そのためには労使委員会の5分の4以上の決議が必要となっている。
1. 24時間について継続して一定以上の休息時間を与えるものとし、かつ、1カ月の深夜業は省令で定める回数以内とする。
2. 健康管理時間が1カ月または3カ月につき一定の時間を超えないこととする。
3. 4週を通じ4日以上かつ1年を通じ104日以上の休日を与える。
また、健康管理時間が週40時間を超え、その超えた時間が月当たり100時間を超えた労働者については医師による面接指導を義務づける。
ここまでの条件等により、実際には24時間365日間継続した労働はありえないことになるが、基本的に時間が対価ではないため、「労働時間規制の例外」という表現は正しいといえる。

なお集会では、過労死弁護団全国連絡会議の川人博幹事長、全国過労死を考える会寺西笑子代表、森岡孝二関西大学名誉教授、労働団体の代表者が話をし、民進党からは蓮舫代表のほか山井和則国会対策委員長、阿部知子、井坂信彦、泉健太、大西健介、長妻昭の各衆院議員、牧山ひろえ参院議員が参加していた。

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