ジャーマンウイングス9525便墜落の悲劇と精神疾患

ジャーマンウイングス9525便墜落事故を覚えているだろうか?
2015年3月24日に起きた航空機事故であるが、これが他の事故と決定的に異なるのは、精神疾患があった副操縦士が故意に墜落させたという極めて特殊性があった点だ。

スペインのバルセロナからドイツのデュッセルドルフに向けて飛行していたドイツの格安航空会社(LCC)ジャーマンウイングス9525便がフランス南東部に墜落した。
定刻から26分遅れでバルセロナを出発し、地中海上空を高度38,000フィートで飛行していたところ、午前10時30分頃にフランスのヴァール県上空において急に降下しだした。10時53分には管制レーダーから機影が消失し、その後アルプス山脈の標高2,000メートル付近に墜落した。

墜落までの間に、緊急事態宣言など一切の交信がなく、フランス当局は回収したボイスレコーダーの解析を行った。
その結果、アンドレアス・ルビッツ副操縦士が機長をコックピットから閉め出し、故意に墜落させた可能性があることが発表された。この時点では動機は不明の状態で、今度はドイツの捜査当局がモンタバウアにある副操縦士の実家を家宅捜索した。これは動機の解明に向けた捜査だった。

ドイツのビルト紙は内部資料やジャーマンウィングスの親会社・ルフトハンザの関係筋から、アンドレアス・ルビッツ副操縦士が合計で約1年半、精神療法を受けた経験があることを報道した。
ドイツの州検察当局の発表では、墜落時にコックピットにいたのは操縦士1人だけだった事実が判明し、またフランスのマルセイユ検察当局者は、機長がコックピットのドアを壊そうとした音が聞こえたことから、機長は恐らくトイレに行くためにコックピットを離れたとの見方を示した。さらに「故意に航空機を破壊しようとしたようだ」と語った。

ドイツ検察の発表では、アンドレアス・ルビッツ副操縦士は医師より「乗務禁止」の診断されつつも、これを隠していたことが明らかになった。事故当日の診断書も見つかったと発表。
さらにドイツ現地紙は、事故当時、副操縦士が失恋したショックがあり、恋人へのインタビュー記事も掲載された。それによると、給料が安い割りに仕事へのプレッシャーが大きいという不満を漏らし、精神科の診察を受けていることを告白されたとある。
また、網膜剥離の視力低下による治療もしていたことで、これも職務続行困難の要因となったととして、犯行動機の一因とう可能性も報じられた。

2016年3月14日にBEAが最終報告書を発表し、副操縦士による故意の墜落と断定された。
この際に、操縦士の精神疾患について、医師の守秘義務解除に関してルールを明確化するように提言された。

わが国でも国土交通省はこの事故を受け、国内で定期運航している航空会社に対し、乗員に特化した健康管理ができる専門医「乗員健康管理医」の配置を義務付ける方針を発表した。
旅客機パイロットの健康管理基準を厳格化し、精神状態を把握して事故を防ぐことを目的とした。

旅客機のパイロットは航空法に基づいて、国指定の航空身体検査医が原則的に1年に1回、「航空身体検査」で心身の状態をチェックすることになっている。だがこの事故の衝撃から、今後さらに健康状態の厳密な把握に努めるようにするため、既に専門医のいる大手航空会社だけでなく、LCCにも専門医の体制整備を促すようにした。さらに国交省は管理医が全乗員と面談できるように促し、操縦室での搭乗やフライトシミュレーターの経験ができるよう求めた。

公共の乗り物である飛行機で、このような悲劇が起きたことは世界中を震撼させ、また再発防止の重要性を認識させた。
多くの命を預かるパイロットであるからこそ、精神面の健康状態に厳格な要求基準が必要であるのは、誰もが認めることだといえる。しかし、現在ではパイロットであるからこそというよりも、一般の事務職や販売職においても、規模は小さくても同じような悲劇が起きないとは限らない。
そのためのメンタルヘルス管理の重要性を改めて考えるためにも、このジャーマンウイングス9525便墜落事故は忘れてはならないものといえるのではないだろうか。

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